木馬亭は日本で唯一のこった浪曲の定席の寄席だ。浅草で一番古い根岸興行社の経営で、今は根岸のおかみさんと私たちが敬愛の気持ちをこめて呼んでいるお席亭、根岸京子さんが守ってくださっている。古い小屋だけれども、ここの壁には、何百人の浪曲師の声節が染みこんでいる。座席数131の小さな空間が、昨日は拍手でいっぱいになった。師匠が登場したときの、「待ってました!」と期待に満ちた拍手の波が耳に残る。「利根の川風たもとに入れ〜て〜」。たっぷりとした声節で、師匠が天保水滸伝の外題付けをうなる。また拍手。壁にいい声節が染みこんでいるから、響きのいい節には壁が共鳴して、この小屋には他にはないグルーヴ感が生まれるのだ、と私は勝手にここに思い入れている。昨日は、木馬亭がよろこんでくれているように感じた。
多くのお客様にお運びいただきました。心からお礼申し上げます。気持ちよい時間をすごしていただけたのなら冥利です。でも、こちらの気がつかなかったこともいっぱいあると思います。遠慮なくダメ出ししてください。次回に生かします。ありがとうございました。
美穂子さんについては井上先生の台本評まさに同感です。6月6日と声にはそれほど違いありませんが、観客の数で如何に違って聴こえるかがはっきり確認出来ました。
福太郎師匠は第1回と違いほぼ完璧な水滸伝でした。次回が益々楽しみです。