あっという間に快復して師匠は舞台に復帰したが、その後の舞台の、前にも増しての充実ぶりに圧倒された。輪郭が水際立っているというか、とにかくカッコイイというか。特にその秋、とあるホールで、後見していた袖で聴いた「忠治山形屋」。鳥肌がたった。面白くて、すごかった。別にケレンで笑わせているわけではない。登場人物に生き生きとした情感が漂い、声節の迫力ものすごく、物語の中に吸い込まれてしまった。こんな浪曲を聴いているお客さんの顔が見たくて幕からのぞいたら、みんな舞台を見ながら顔がほどけていた。
浪曲はこれからどうなっていくんだろう。でも、私の目の前には絶好調の師匠がいる。浪曲の明日はともかくとして、現在こんなにステキな浪曲が、あるんだ!
徹底天保水滸伝第二夜。明日です。うちの師匠、玉川福太郎の浪曲を、聴いてください。お待ちしています。