いつもと、客席の風景が違いました。
「ナマ奈々福ははじめての人!」
お客様の三分の一くらいの方が手を上げられたような気がしました。
でも、そのうち、テレビを見てこられた方は、数名……。
???
とりあえず、いつもより平均年齢が低く感じられる客席に向かって、豊子師匠の、超快調な糸にバッチリ支えていただき、マイクなし高座二席。
今回は、いつもよりずっと緊張しました。
メインである「新宿お七」。朝っぱらの浅草でやる演題ではない、という感じだったので、客席の灯りを消しました。
入り込んで演じるしかないと思いましたが、自分の感情が、演じるうちに、ぐらっと動いてしまって、そのことに戸惑いました。
体力使った〜〜。でも、お客様の反応あたたかく、「再演希望!」とまで言っていただき(涙)。
またやれるような機会があったら、やってみる、かな、と考えております。
ライブを終えた奈々福は、そのまま東京駅から高速バスにのって、笹川へ行きました。
年に一度の笹川の神楽を見るためです。
千葉県の無形民俗文化財になっている「笹川神楽」。800年も受け継がれているものです。神楽が始まるのは、昼前。終わるのは夜十時(!)。これが三日続きます。
諏訪神社の神楽殿で、古事記のさまざまな神の物語が演じられます。

神楽殿に、子どもがぶら下がって、ずっと見ている(笑)。
笹川のヒトたちは、子どものときからずっとこの神楽を見て育っているので、誰に聞いても、「これはどの場面で、神様の名前はこうこうで、今年は誰それの甥っ子の薬屋の○○ちゃんが演じていて、それはどういう物語なのだ」ということを、カンペキに説明してくれます。
夕方からは雨が降ってきたのに、みんな傘も差さずに見ている……。
最後にスサノオノミコトが、真剣(その年のスサノオ役に当たった人が、数十万円出して、本当の日本刀を買うのだそうです)で、注連縄を切ると、その注連縄の奪い合いになります。
その土地で生まれ、その土地の文化を受け継いで育っていくって、すごいことだなあと思いました。
翌朝のお散歩は、もちろん大利根河原。ここで「利根の川風〜」をお稽古せずにどこでする。まさしく、大利根河原の大喧嘩のあった場所を歩きつつ。
朝ごはん食べたあとは、笹川で三百年続いている醤油屋さんを見せていただきました。

「入正醤油」さんの創立は享保9年!
発酵系(味噌醤油納豆ぬか漬け)食品大好きの奈々福。
お醤油蔵は、今までも見学したことあります。
しかし、今回びっくり。
全国の醤油蔵で、木桶で仕込んでいるところ、まだありますけれど、直径2.6メートル、高さ2.6メートルという杉の木桶が、100もあるところは、他にないのではないかしら。
しかも、現在の一般的な醤油は仕込みから出荷までの醸造期間は、だいたい半年なのに、入正さんのお醤油は、一年なのです。
静かな醤油蔵に入ると、桶の表面にぷつぷつと泡が立ち、発酵している音だけがします。

ちょびっとなめさせてもらった醤油のあとあじ、鼻に抜ける香りのよさ!
醤油蔵の見学をさせていただいたあと、母屋のほうにまわって、驚きました。見事なお庭! いわゆる洋花たくさんのカラフルなお庭ではなく、茶花になるような、山野草の庭の見事さ。
十三代目のご当主の奥様の丹精されているお庭でした。
いれていただいたお茶を一口のんで、奈々福の目はキラリと光りました。
アタクシ、ダテにグリーン倶楽部の副会長をやっているわけではありません。お茶のおいしさ!
「このお茶を入れた人はタダモノではない……」。
それも、ご当主の奥様。
囲炉裏にかけた鉄瓶でわかした井戸水を、温度をきちんと加減していれたお茶だったのでした。
歴史を守り、丁寧に暮らすことを実践されている心栄えの深さを、そこここに感じるのでした。
入正さんの門の前のしだれ桜も満開!

さて、明日は定席の出番です。お待ちしてます!